津波について基礎知識

2024年1月1日

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津波について知ろう

津波とは何か

 津波は海底から海面までの全ての海水が動くのである。しかも、津波は数㎞から数百㎞にも及ぶ。津波は、大量の海水が巨大な塊となって押し寄せるので、沿岸でもその力が衰えず、周囲の物を破壊しながら陸上の奥深くへと一気に進む。さらに、津波は引く時にも強い力を保っているので、破壊した物を一気に海中へ引きずり込む。津波の地面からの高さが1m を超えると木造家屋に被害が出始め、地面からの高さ50㎝ の津波でも、車が流されるほどの力を持っている。

 また、波長の長い津波ほど、そのエネルギーは衰えにくく、遠くまで伝わりやすいという性質がある。そのため、巨大地震に伴う波長の長い津波によって、震源から遠く離れた場所が津波に襲われることがある。

 

津波の速さと高さ

 津波は海が深いほど速く伝わり、水深が浅くなるにつれて速度は遅くなる。

 しかし、海岸近くでもオリンピックの短距離選手並の速さで迫ってくるので、普通の人が走って逃げ切ることは難しい。つまり、津波がやってくるのを見てから避難を始めたのでは遅いのだ。

 さらに、津波が陸地に近づき速度が遅くなると、後ろの波が前の波に追いつき高い津波とり、反射を繰り返すことで津波が何回も押し寄せたりすることがある。そのため、第1波の津波が一番高いとは限らない。

 また、津波の高さは海岸付近の地形によって大きく変化する。気象庁が津波情報で発表する「予想される津波の高さ」とは、海岸線において、津波がない場合の潮位から、津波によって海面が上昇した高さの差のことを言う。津波は陸上を、海岸線での津波高の2倍の標高まで駆け上ることもあり、さらに岬の先端やV字型の湾の奥など津波の力が集中しやすい場所では、最大で4倍程度の標高まで駆け上ることもある。例えば、海岸線で2mの高さの津波は、最大で標高8mの高さまで駆け上る可能性があるのだ。

 

津波警報・注意報

 気象庁は、地震が発生した時には地震の規模や位置をすぐに推定し、これらをもとに沿岸で予想される津波の高さを求め、 地震が発生してから約3分(一部の地震については約2分)を目標に、大津波警報、津波警報または津波注意報を、 津波予報区単位で発表します。

※日本近海で発生し、緊急地震速報の技術によって精度の良い震源位置やマグニチュードが迅速に求められる地震

 この時、予想される津波の高さは、通常は5段階の数値で発表します。ただし、地震の規模(マグニチュード)が8を超えるような巨大地震に対しては、 精度のよい地震の規模をすぐに求めることができないため、その海域における最大の津波想定等をもとに津波警報・注意報を発表します。 その場合、最初に発表する大津波警報や津波警報では、予想される津波の高さを「巨大」や「高い」という言葉で発表して、非常事態であることを伝えます。
 このように予想される津波の高さを「巨大」などの言葉で発表した場合には、その後、地震の規模が精度よく求められた時点で津波警報・注意報を更新し、予想される津波の高さも数値で発表します。 

 

津波警報・注意報の種類
種類 発表基準 発表される津波の高さ 想定される被害と
取るべき行動
数値での発表
(予想される津波の高さ区分)

大津波警報 予想される津波の最大波の高さが高いところで3mを超える場合。 10m超
(10m<予想される津波の最大波の高さ)

巨大な津波が襲い、木造家屋が全壊・流失し、人は津波による流れに巻き込まれます。
沿岸部や川沿いにいる人は、ただちに高台や避難ビルなど安全な場所へ避難してください。
10m
(5m<予想される津波の最大波の高さ≦10m)
5m
(3m<予想される津波の最大波の高さ≦5m)
津波警報 予想される津波の最大波の高さが高いところで1mを超え、3m以下の場合。 3m
(1m<予想される津波の最大波の高さ≦3m)

標高の低いところでは津波が襲い、浸水被害が発生します。人は津波による流れに巻き込まれます。
沿岸部や川沿いにいる人は、ただちに高台や避難ビルなど安全な場所へ避難してください。
津波注意報 予想される津波の最大波の高さが高いところで0.2m以上、1m以下の場合であって、津波による災害のおそれがある場合。 1m
(0.2m≦予想される津波の最大波の高さ≦1m)

海の中では人は速い流れに巻き込まれ、また、養殖いかだが流失し小型船舶が転覆します。
海の中にいる人はただちに海から上がって、海岸から離れてください。

 *大津波警報を「特別警報」に位置づけています。特別警報に関する詳しい情報は、「特別警報について」のページをご覧ください。


津波警報・注意報と避難のポイント

  • 震源が陸地に近いと津波警報・注意報が津波の襲来に間に合わないことがあります。強い揺れや弱くても長い揺れを感じたときは、すぐに避難を開始しましょう。
  • 津波の高さを「巨大」と予想する大津波警報が発表された場合は、東日本大震災のような巨大な津波が襲うおそれがあります。直ちにできる限りの避難をしましょう。
  • 津波は沿岸の地形等の影響により、局所的に予想より高くなる場合があります。ここなら安心と思わず、より高い場所を目指して避難しましょう。
  • 津波は長い時間くり返し襲ってきます。津波警報・注意報が解除されるまでは、避難を続けましょう。 

 

まとめ

 強い地震が起きた時は、直ぐに海岸から離れ、高台などの安全な場所に避難することだ。しかし、比較的小さな揺れでも、長時間ゆっくりとした揺れの地震は「津波地震」と呼ばれ、大津波が発生する場合があるので避難が必要である。いずれにせよ、地震が起きたら直ぐに海岸から離れ浸水予想地域の外まで避難するのが大原則だ。

 また、既に述べているように、津波は必ずしも第1波が最も高いという訳ではない。また、津波が川を遡る、あるいは、排水溝を逆流し、マンホールや側溝から溢れ出るという例も報告されている。海岸線から離れていても、必ず安全というわけではない。津波警報が解除されるまでは、避難場所を離れてはならない。なお、津波注意報が発表された場合は、陸上への浸水の心配はないため居住地からの避難は不要だが、海水浴客などは陸上へ退避する必要がある。

 日頃から家族で避難場所、避難経路、非常時の連絡方法などを決めておくことも重要だ。自分が住む市町村が津波ハザードマップを公表していれば、そうした家族の約束を決める際に役立つ。

 そして、津波が引き潮から始まると誤解し、津波が来るかどうかを確認するために海岸に向かうことは非常に危険だ。北海道南西沖地震、平成15年の十勝沖地震、海外では平成16年のスマトラ沖地震でも、スリランカやインドでは直前に潮が引くことなく津波が押し寄せている。

 

「特集 津波について知ろう」(内閣府)(https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h22/05/special_01.html)をもとに消防119まとめが作成  

 気象庁「津波警報・注意報、津波情報、津波予報について」(https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/joho/tsunamiinfo.html)をもとに消防119まとめが作成