全国消防救助技術大会について

2018年12月23日

救助 訓練

t f B! P L




 日本全国で活躍する救助隊の持つ技術力の高さは,海外からも評価されています。この救助技術の向上を目的として,開催されているのが「全国消防救助技術大会」です。

 みなさん,救助大会についてどのくらい知っていますか?
 いろんな種目があるけど,実はやったことがないんでわからない・・・
 種目は知っているけど,内容は知らない・・・
 水上の部なんてあったの?

 という疑問があっても,なかなか先輩に聞きにくいと思います。
 そこで,この救助大会についてまとめてみたいと思います。

全国消防救助技術大会について


昭和47年から毎年,全国消防救助技術大会が開催されています。
主催は一般財団法人全国消防協会です。

この大会の目的は,救助技術の高度化に必要な基本的要素を練磨することを通じて,消防救助活動に不可欠な体力,精神力,技術力を養うとともに,全国の消防救助隊員が一堂に会し,競い,学ぶことを通じて,他の模範となる消防救助隊員を育成し,全国市民の消防に寄せる期待に力強く応えることです。

そして,大会を通じて広く全国の市民に,消防の技術の高さ,力強さ,優しさをアピールするとともに,常に市民の目線に立って大会内容を研究し,全国大会を未来志向の大会とすることを目標としています。

 全国消防救助技術大会で行う訓練は,陸上の部と水上の部に分かれています。

隊員ひとりひとりが基本的な技能を練磨する「基礎訓練」と,隊員個人の技能とともに隊員間の連携を練磨する「連携訓練」,さらに,使用する器材や訓練要領等を定めず出場隊員の創意工夫のもと訓練想定から救助方法までを披露する「技術訓練」があります。

全国大会に出場するためには,県大会を突破し,地区大会を突破しなければなりません。
地区大会は,北海道,東北,関東,東海,東近畿,近畿,中国,四国,九州の地区に別れて開催されています。

地区大会には20000人以上の消防職員が出場していますが,全国大会には1000人程度しか出場できませんので狭き門です。


陸上の部(8種目)


【1】はしご登はん(基礎)・・・標準所要時間24秒

 自己確保の命綱を結索した後,垂直はしごを15メートル登はんする。災害建物への進入等,消防活動には欠かせない訓練です。


【2】ロープブリッジ渡過(基礎)・・・標準所要時間28秒

 水平に展張された渡過ロープ20メートル(往復40メートル)を,往路はセイラー渡過,復路はモンキー渡過するロープ渡過の基本的な訓練です。


【3】ロープ応用登はん(連携)・・・標準所要時間16秒

 登はん者と補助者が2人1組で協力し,器材を使わずに塔上から垂下されたロープを15メートル登はんする訓練です。


【4】ほふく救出(連携)・・・標準所要時間1分10秒

 3人1組(要救助者を含む)で,1人が空気呼吸器を着装して長さ8メートルの煙道内を検索し,要救助者を屋外に救出した後,二人で安全地点まで搬送する。ビルや地下街等で煙に巻かれた人を救出するための訓練です。


【5】ロープブリッジ救出(連携)・・・標準所要時間1分15秒

 4人1組(要救助者を含む)で,2人が水平に展張された渡過ロープ(20メートル)により対面する塔上へ進入し,要救助者を救出ロープに吊り下げてけん引して救出した後,脱出する。要救助者を隣の建物等から進入し,救出することを想定した訓練です。


【6】引揚救助(連携)・・・標準所要時間2分30秒

 5人1組(要救助者を含む)で2人が空気呼吸器を着装して搭上から塔下へ降下し,検索後,要救助者を塔下へ搬送し,4人で協力して塔上へ救出した後,ロープ登はんにより脱出する。地下やマンホール等での災害を想定した訓練です。


【7】障害突破(連携)・・・標準所要時間3分15秒

 5人1組(補助者を含む)で4人が緊密な連携の下,一致協力して「乗り越える」「登る」「渡る」「降りる」「濃煙を通過する」の基本動作により5つの障害を突破する。災害現場の様々な障害を想定した訓練です。


【8】技術訓練

 定められた手法,器材に縛られることなく,創意と工夫のもとでより安全で的確,迅速な訓練を発表する訓練です。


水上の部(8種目)


【1】基本泳法(基礎)・・・標準所要時間40秒

 「じゅんか飛び込み」で入水した後,常に顔が水面に出た状態で,基本的な泳法である「ぬき手」と「平泳ぎ」でそれぞれ25メートルずつ泳ぐ。水難救助の基本的な泳法を習得するための訓練です。


【2】複合検索(基礎)・・・標準所要時間40秒

 マスク,スノーケル,フィンを着装し,スノーケリングで障害物(救命浮環)を突破しながら水中に沈められたリングを検索して,引き揚げる。水中の行方不明者の捜索を想定した訓練です。


【3】溺者搬送(連携)・・・標準所要時間42秒

 2人1組(要救助者を含む)で,救助者が「じゅんか飛び込み」で入水後,要救助者(溺者)を注視しながら近づき,チンプールで確保した後,ヘアーキャリーにより救助する訓練です。


【4】人命救助(連携)・・・標準所要時間1分13秒

 3人1組(要救助者を含む)で救助者が「二重もやい結び」のロープをたすき掛けにして要救助者の位置まで泳ぎ,要救助者をクロスチェストキャリーで確保し,補助者が救助ロープをたぐり寄せて救助した後,再び水没しつつある要救助者(訓練人形)を水面に引き揚げ,救助する訓練です。


【5】水中結索(連携)・・・標準所要時間2分00秒

 3人1組で水中の結索環に,第一泳者は「もやい結び」,第二泳者は「巻き結び」,第三泳者は「ふた回りふた結び」のそれぞれ指定された三種類のロープ結索を行う。水中におけるロープ結索技術を習得するための訓練です。


【6】溺者救助(連携)・・・標準所要時間43秒

 3人1組(要救助者を含む)で救助者と補助者の2人が協力して浮環にロープを結着後,補助者が浮環をプール内へ投下して,救助者が20メートル先の要救助者の位置まで浮環を搬送し,これに要救助者をつかまらせ,補助者がロープをたぐり寄せて救助する訓練です。


【7】水中検索救助(連携)・・・標準所要時間1分42秒

 4人1組で第一泳者が水面を,第二泳者が水中をそれぞれ検索し,水没している要救助者(訓練人形)を発見して水面へ引き揚げた後,第三泳者と第四泳者が協力して対岸の救出地点まで搬送し,救助する訓練です。


【8】技術訓練

 定められた手法,器材に縛られることなく,創意と工夫のもとでより安全で的確,迅速な訓練を発表する訓練です。


全国救助技術大会開催都市について

 

開催日

主管都市

開催場所

1

昭和47(1972)928

東京都

豊島園

2

昭和48(1973)921

大阪市

扇町公園

3

昭和49(1974)918

横浜市

県立保土ヶ谷公園

4

昭和50(1975)910

東京都

平和島公園

5

昭和51(1976)910

名古屋市

白川公園/瑞穂プール

6

昭和52(1977)818

横浜市

市消防訓練センター

7

昭和53(1978)822

千葉市

県消防学校

8

昭和54(1979)824

大阪市

市消防学校

9

昭和55(1980)829

名古屋市

白川公園/瑞穂プール

10

昭和56(1981)819

横浜市

市消防訓練センター

11

昭和57(1982)819

横浜市

市消防訓練センター

12

昭和58(1983)819

大阪市

大阪城公園/市消防学校

13

昭和59(1984)824

名古屋市

白川公園/瑞穂プール

14

昭和60(1985)822

広島市

中央公園/県立屋内プール

15

昭和61(1986)822

神戸市

市民防災総合センター/神戸市王子プール

16

昭和62(1987)821

千葉市

県消防学校

17

昭和63(1988)819

横浜市

市消防訓練センター

18

平成元年(1989)825

名古屋市

白川公園/瑞穂プール

19

平成2(1990)824

広島市

中央公園/ファミリープール

20

平成3(1991)828

大阪市

市消防学校

21

平成4(1992)828

千葉市

県消防学校

22

平成5(1993)820

福岡市

市図書館建設用/県立総合プール

23

平成6(1994)825

京都市

市消防学校

24

平成7(1995)825

北九州市

北九州市文化記念公園

25

平成8(1996)823

札幌市

市消防訓練場/平岸プール

26

平成9(1997)822

千葉市

県消防学校

27

平成10(1998)828

大阪市

市消防学校

28

平成11(1999)819

横浜市

市消防訓練センター

29

平成12(2000)818

熊本市

熊本市総合屋内プール(アクアドームくまもと)

30

平成13(2001)88

東京都

東京消防庁豊洲訓練場/東京辰巳国際水泳場

31

平成14(2002)823

名古屋市

市消防学校

32

平成15(2003)828

仙台市

仙台市泉総合運動場グラウンド/プール

33

平成16(2004)826

兵庫県・神戸市

兵庫県消防学校

34

平成17(2005)825

さいたま市

岩槻文化公園/県営大宮公園水泳場

35

平成18(2006)824

札幌市

市消防学校/平岸プール

36

平成19(2007)822

東京都

東京消防庁夢の島訓練場/東京辰巳国際水泳場

37

平成20年(2008年)829

北九州市

勝山公園/勝山市民プール

38

平成21年(2009年)820

横浜市

市消防訓練センター

39

平成22年(2010年)827

京都市

京都市消防活動総合センター

40

平成23年(2011年)8

さいたま市

震災などの発生を考慮し、
地区支部指導会を含め中止

中止決定:平成2344

41

平成24年(2012年)87

東京都

ゆりかもめ新豊洲駅前特設会場/東京辰巳国際水泳場

42

平成25年(2013年)822

広島市

旧広島市民球場跡地/広島市総合屋内プール

43

平成26年(2014年)827

千葉市

広島市で発生した大雨に起因する
土砂災害を考慮し中止

中止決定:平成26822

44

平成27年(2015年)829

神戸市

神戸学院大学ポートアイランドキャンパス/

神戸市立ポートアイランドスポーツセンター

45

平成28年(2016年)824

松山市

松山中央公園
運動広場/アクアパレットまつやま

46

平成29年(2017年)823

仙台市

宮城県総合運動公園 グランディ・21

47

平成30年(2018年)824

京都市

台風接近を考慮し中止
中止決定:平成28822

48

令和元年(2019年)825

岡山市

岡山市消防教育訓練センター/
岡山市立市民屋内温水プール

49

令和2年(2020年)1024

北九州市

新型コロナウイルス感染症の国内における
感染の状況を踏まえ令和310月に延期
延期決定:令和2716

49

令和3年(2021109

北九州市

新型コロナウイルス感染症の国内における
感染の状況を踏まえ中止
中止決定:令和3629