救急隊員の行う心肺蘇生方法について

2019年5月22日

救急

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救急隊員の行う心肺蘇生方法について



消防救第35号平成28年4月25日消防庁救急企画室長
救急隊員の行う心肺蘇生方法について(通知)から引用

忘れないようにブックマークしておくと,すぐに確認できると思います。
現場活動の参考にしてください。

1 心停止の判断

救急隊員及び消防職員は,「反応がなく、気道確保しても呼吸がない。」 場合又は「 死戦期呼吸の状態」も心停止と判断し,直ちに心肺蘇生法を開始する。また,「呼吸が正常か判断できない場合」も,直ちに心肺蘇生法を開始する。
救急隊員は呼吸確認と同時に脈拍の有無も確認するが,脈拍の有無に自信がもてないときは呼吸の観察結果のみに基づいて,直ちに心肺蘇生法を開始する。
呼吸と脈拍の確認及び気道確保を含め10秒以内に実施する。

2 胸骨圧迫の方法,程度,速さ等

(1)成人,小児,乳児の速さ(テンポ)は,毎分100120回で行う。
(2)成人の胸骨圧迫の深さは,約5cmで浅くならないように留意する。
(ただし,6cmを超えない)
(3)胸骨圧迫の中断時間は最小限にする



救急隊員の行う心肺蘇生法の実施要領


以下別紙から引用

1.反応、気道、呼吸及び循環(脈)の確認

(1)反応の確認
大声で呼びかけあるいは肩をたたいても何らかの応答や目的のある仕草がなければ反応なしとみなす。
(2)気道の確認及び確保
常に傷病者の気道の状態について確認するとともに、良好な気道の確保に努める。
用手的な気道確保については、頭部後屈顎先挙上法又は下顎挙上法を行う。
(3)呼吸及び循環(脈)の確認
呼吸があるか、脈拍を確実に触知できるかを、気道確保を含めて10秒以内に確認する。
(4)反応の確認から呼吸、脈拍の確認までは複数の救急隊員が同時並行で行うことも考慮する。

2.胸骨圧迫の実施要領

(1)胸骨圧迫の位置は胸骨の下半分とし、目安としては「胸の真ん中」とする。
なお、乳児及び新生児の場合の「胸の真ん中」の指標は、両乳頭を結ぶ(想像上の)線の少し足側(尾側)胸骨上とする。
(2)圧迫の方法、程度、速さ等は、次のとおり行う。
成人の場合には、約5cm沈むまでしっかり圧迫する。(ただし、6cmを超えない)
胸骨圧迫のテンポは、毎分100120回の速さで行う。
小児の場合には、救助者の両腕又は片腕で、十分な圧迫ができるように胸の厚さの3分の1までしっかり圧迫し、(圧迫の深さが不十分になりやすいので注意する 。) 胸骨圧迫のテンポは、毎分100120回の速さで行う。
乳児、新生児の場合には、指二本(1人法)又は胸郭包み込み両拇指圧迫法(2人法)で圧迫し、胸の厚さの3分の1までしっかり圧迫する。胸骨圧迫のテンポは、毎分100120回の速さで行う。

3.胸骨圧迫実施上の注意事項

(1)胸骨圧迫の中断時間は最小限にする。
(2)圧迫の解除は、掌が胸から離れたり浮き上がったりしないように注意し、しかも胸が元の位置に戻るよう充分に圧迫を緩める。
(3)胸骨圧迫の評価は、圧迫の深さや速さで評価することとし、頸動脈等の脈拍では評価しない。
(4)剣状突起を圧迫しない。
(5)胸骨圧迫の深さ、速さが不十分になりやすいので(特に疲労時)注意する。
(6)救助者が二人で対応する乳児、新生児の場合は、胸郭包み込み両拇指圧迫法は4本の指で胸郭を絞り込む動作を加える。

4.人工呼吸の実施要領(バッグ・バルブ・マスクを使用する場合)

(1)成人(思春期以降(年齢としては概ね15歳超が目安)の年齢層の者をいう。以下同じ)、小児(1歳から思春期以前(年齢としては15歳程度・中学生までが目安)の者をいう。以下同じ)、乳児(1歳未満の者をいう。以下同じ)、新生児(生後28日未満の者をいう。以下同じ)ともに、胸の上がりが見える程度の換気量を1回1秒かけて送気する。
(2)換気は、気道確保に注意しながら2回続けて行う。
(3)呼吸はないが脈が確実に触知できる場合は、人工呼吸のみを行う。成人の場合には、10/分程度(ほぼ6秒に1回の割合)、小児、乳児、新生児の場合には、12回~20/分(ほぼ35秒に1回の割合)で、それぞれ人工呼吸を繰り返す。この場合、およそ2分毎に脈が確実に触知できることを(およそ10秒以内で)確認する。

5.人工呼吸実施上の注意事項

(1)呼吸停止と判断した場合には、直ちに人工呼吸を開始する。ただし、心停止と判断した場合は、胸骨圧迫の開始を優先する。
また、成人の場合、心停止直後には、死戦期呼吸が認められることがある。この場合、呼吸停止として取り扱うこと。小児、乳児、新生児の場合、呼吸数10/分以下の徐呼吸も、呼吸停止と同様に対応する。
(2)人工呼吸を行う際には気道確保を確実に行う。実施中に抵抗が感じられるとき、又は胸の膨らみが悪いときは、気道確保をやり直した後に再度換気を試みる。心停止であり気道確保が速やかに行えない場合は、胸骨圧迫を優先する。再度の気道確保にもかかわらず換気抵抗が著しい場合には異物による気道閉塞が考えられるので、喉頭鏡を使用して異物の有無を確認する。異物がある場合には、マギール鉗子、吸引器等を用いて除去する。異物を除去できない場合は、通常の心肺蘇生を行いながら、気道確保を行うたびに口腔内を確認し、異物が確認できれば除去することとし、盲目的指拭法は行わない。なお、喉頭鏡を用いて異物除去を行う場合も、やむをえない場合を除いて、できるだけ胸骨圧迫を継続する。
(3)経口・経鼻エアウェイは、頭部後屈顎先挙上法や下顎挙上法によっても気道確保が不十分な場合、又はその維持が困難な場合に使用する。
(4)酸素を併用したバッグ・バルブ・マスク、手動引金式人工呼吸器あるいは自動式人工呼吸器を使用する場合も、上記の実施要領に準じ可能な限り高濃度酸素を用いて人工呼吸を実施する。
(5)人工呼吸の効果は、換気に伴う胸部の膨らみや換気抵抗等により確認する。心肺蘇生中のパルスオキシメーターの値は無意味であることを十分に理解し、傷病者に十分な循環が戻った後に使用するものであることに留意する。

6.心肺蘇生法の実施要領(人工呼吸及び胸骨圧迫の併用)

(1)それぞれの救急隊員は、傷病者に対し適正な観察及び処置が行うことができる場所に位置する。
(2)反応の有無を確認した後、気道確保を含め呼吸及び脈拍の有無を10秒以内で判断すること。脈拍の確認は、成人では頸動脈等、小児では頸動脈又は大腿動脈等、乳児、新生児では上腕動脈等で行う。
「反応がなく、気道確保しても呼吸がない。」場合又は「死戦期呼吸の状態」も心停止と判断し、直ちに心肺蘇生法を開始する。また、「呼吸が正常か判断できない場合」も、直ちに心肺蘇生法を開始する。
救急隊員は呼吸確認と同時に脈拍の有無も確認するが、脈拍の有無に自信がもてないときは呼吸の観察結果のみに基づいて、直ちに心肺蘇生法を開始する。
また、小児、乳児、新生児の場合、充分な酸素投与や人工呼吸にもかかわらず、
心拍数が60回/分以下でかつ循環が悪い(皮膚蒼白、チアノーゼ等)場合も胸骨圧迫を開始する。
(3)心停止と判断した場合、原則として胸骨圧迫から開始し、人工呼吸の準備が整い次第、2回の人工呼吸を行う。ただし、目前での心停止や有効な人工呼吸を伴う心肺蘇生から引き継ぐ場合については、胸骨圧迫30回から開始する。
(4)人工呼吸は、1回目の人工呼吸によって胸の上がりが確認できなかった場合は、気道確保をやり直してから2回目の人工呼吸を試みる。この場合でも胸骨圧迫の中断は10秒以内とする。2回の試みが終わったら(それぞれ胸の上がりが確認できた場合も、できなかった場合も)、それ以上は人工呼吸を行わず、直ちに胸骨圧迫を開始すること。ただし、換気抵抗が著しく異物による気道閉塞が考えられる場合は喉頭鏡を使用して異物の有無を確認する。
(5)成人の場合は、胸骨圧迫30回、人工呼吸2回のサイクルを、小児、乳児、新生児の場合で救助者が1人の場合は、胸骨圧迫30回、人工呼吸2回のサイクルを、救助者が2人の場合は、胸骨圧迫15回、人工呼吸2回のサイクルを繰り返す。

7.心肺蘇生法実施上の注意事項

(1)心肺蘇生法は原則として中断することなく実施することとし、特に胸骨圧迫については中断を最小限にとどめる現場活動をする。
(2)胸骨圧迫の交代要員がいる場合には、胸骨圧迫の担当を約2分間おきに交代することが望ましい。なお、交代に要する時間は最小限とし、最大でも5秒以内とする。
(3)胸骨圧迫や人工呼吸が適切に維持されるよう、相互的に評価し合い継続的に心肺蘇生の質を確保する。
(4)自動体外式除細動器を用いて除細動する場合や階段で傷病者を移動する場合などの特殊な状況でない限り、胸骨圧迫の中断時間はできるだけ10秒以内にとどめる。
(5)心肺蘇生は、充分な循環が戻る又は医師に引き継ぐまで継続する。

8.電気的除細動の実施要領【自動体外式除細動器を使用】

【適応】
(1)電気的除細動の適応は、全年齢の傷病者を対象とする。
【操作等】
(2)心停止の場合には、心肺蘇生を開始し、直ちに自動体外式除細動器(以下「除細動器」という。)を準備する。
(3)除細動器の電源を入れる。
(4)電極パッドと除細動器を接続する。(接続済みの場合は確認をする。)
(5)傷病者の胸部に電極パッドを貼付する準備をする。
(6)電極パッドに表示されている部位の皮膚に直接それぞれの電極パッドを貼付する。具体的な貼付位置については、右上前胸部(鎖骨下)と左下側胸部(左乳頭部外側下方)に貼付する。代替的貼付位置として上胸部背面(右又は左)と心尖部に貼る方法(apex-posterior)も考慮する。
(7)周囲に対して、準備が完了したことを周知する。
(8)傷病者から離れて心電図を解析する。ただし、心電図解析の直前まで心肺蘇生(特に胸骨圧迫)を継続し、中断から除細動までの時間を最小限とする。
(9)解析の結果、電気的除細動が必要であれば、傷病者に誰も触れていないことを確認し、通電ボタンを押す。
10)除細動は1回とし、除細動実施後は、観察することなく速やかに胸骨圧迫から開始して、心肺蘇生を約2分間もしくは除細動器が自動的に心電図の解析を始めるまで実施する。
11)約2分間毎に、心電図を再度解析し、以後必要に応じ、「除細動(1回)心肺蘇生心電図解析」を病院到着まで繰り返す。
12)単相性の除細動器を使用する場合のエネルギー量については、360Jとする。二相性の除細動器を使用する場合のエネルギー量については、メーカーが既定したエネルギー量で除細動を行う。
13) 就学児までに対する除細動については、除細動器が小児用パッド(除細動エネルギー減衰機能を有するパッドを含む。)や小児用モードを備えている場合は、それを使用する。ない場合は、成人用パッドを代用する。
14)必要な心肺蘇生を実施し、医療機関に速やかに搬送する。

9.電気的除細動実施上の注意事項

(1)傷病者接触時に通報後4~5分以上が経過し、その間適切な心肺蘇生が行われていなかった場合は、除細動実施の前に約2分間の心肺蘇生を行ってもよい。
(2)除細動器が直ちに準備できない場合は心肺蘇生を継続し、速やかに医療機関に搬送することを考慮する。
(3)成人用パッドと小児用パッドの適応年齢が成人、小児の年齢区分と異なることに注意する。
(4)電極パッドを傷病者に貼付する際には、下記のに注意する。
傷病者の皮膚に直接貼付し、密着させる。
傷病者の前胸部が濡れている場合は、水分を十分に拭う。
パッドを貼る場所に医療用の植え込み器具がある場合には、その部分を避けてパッドを貼る。
パッドを貼る場所に経皮的な薬剤パッチ(ニトログリセリン、ニコチン、鎮痛剤、ホルモン剤、降圧剤等)の貼付薬がある場合は、貼付薬を剥がし、薬剤を拭き取る。
胸毛が多い傷病者では、電極パッドを強く胸に押し付けても解析が進まなければ除毛を考慮する。
就学児 以上の小児及び成人に対し小児用パッド(除細動エネルギー減衰機能を有するパッドを含む。)や小児用モードを使用しての除細動は行わない。
出生直後の新生児仮死は、心肺蘇生を最優先とする。
2枚の電極パッドが接触することなく貼付できない場合は、電極パッドを貼付することなく心肺蘇生を継続する。
(5)搬送中に心電図解析を行う必要がある場合は、障害信号(アーチファクト等)により正確に解析が行われないことがあるため、解析は車両を停車させて行う。
(6)除細動に伴うスパークによって火災等が発生する可能性があることから、除細動時には、高流量・高濃度の酸素が傷病者の周囲に滞留しないよう充分配慮する。

10.外傷その他

(1)頸椎(髄)損傷を疑う傷病者の気道確保では、下顎挙上法を第一選択とする。ただし、下顎挙上法による気道確保が不十分であったり、その実施が困難な場合では頸椎保護より気道確保を優先し、頭部後屈顎先挙上法を試みる。
(2)頭頸部を非動化する場合、人手がある限り用手的方法を優先する。
(3)溺水の場合、迅速な(水中からの)引き揚げと心肺蘇生開始(特に人工呼吸)が重要であることに留意する。
(4)高度の低体温(中心部体温30°C未満)が疑われる傷病者の場合は、呼吸、脈の確認は3045秒かけて行う。心停止が確認された場合には速やかに心肺蘇生を開始する。心室細動、無脈性心室頻拍に対する電気的除細動は1回のみ(その後直ちに心肺蘇生を再開する。)とし、2回目以 降の除細動の試みは原則として中心部体温が30°C以上となるまでは行わない。なお、循環の保たれている傷病者では、より愛護的に扱い、不用意な体動を避け保温に努める。