【犯罪】嘘の119番したら?【どうなる】

2019年7月5日

その他 火災 質問

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虚偽の119番通報をした者の刑事責任について


 A男は,子供のころから消防士に憧れ,119番通報をすれば,消防士の姿を見ることができると考え,火災が起きていないのにもかかわらず,公衆電話から119番に電話して,「火事です。場所は,○○市○○町○番地のB店の近くです。」 と嘘の内容を話した。

 A男の刑事責任は?


消防法 第四十四条

次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。

20号 正当な理由がなく消防署又は第二十四条(第三十六条第八項において準用する場合を含む。)の規定による市町村長の指定した場所に火災発生の虚偽の通報又は第二条第九項の傷病者に係る虚偽の通報をした者

 この法律の趣旨は,虚偽の通報によって,いたずらに人に不安を与えることを防止するとともに,通報を受けた消防機関が誤認することによって出動した場合の人的又は物的な損失を未然に防ごうとするものです。

市町村長の指定した場所

ここにいう「市町村長の指定した場所」とは,119番通報を受理する場所(指令センター等)・消防署の出張所等をいいます。

通報

「通報」とは,直接口頭によると,電話によるとを問わず,消防署又は第二十四条の規定による市町村長の指定した場所に,火災の発生や緊急に医療機関へ搬送する必要がある傷病者のあることを知らせることをいいます。

結論


 したがって,A男が警察署や交番に虚偽の通報をしたのであれば,警察署等は 「消防署又は第二十四条の規定による市町村長の指定した場所」ではないことから,消防法違反は成立しないことになりますが,別の罪に問われる場合があります。

 通報の内容については,単に「火事です。」などというだけでは足りず,併せて具体的な発生場所を知らせるなど,消防隊や救急隊の出動を促すに足りる内容のものであることを必要とすると解されています。

 今回の事例の場合,「消防士の姿が見たいから」というA男の動機は,正当な理由には当たらず,A男は,火災が発生していないにもかかわらず,119番に電話し,「市町村長が指定した場所」に「火事です。場所は・・・です。」 と消防隊の出動を促すに足りる虚偽の内容を通報したものであるから,消防法第44条20号違反の刑事責任を負います。

 消防隊の出動した数が多くて,その他の業務(救急業務等)が妨害されたと認められた場合には,刑法第233条(業務妨害)が適用される場合もあります。

実際の判例

2006年9月11日に仙台市消防局に対して「国道48号の関山トンネル(仙台市青葉区作並付近)でトラック5台の多重衝突事故があり、クルマが炎上している」との通報がありました。

 通話の途中で電話が切れて掛け直しができなかったこともあり,消防では「緊急性の高い事故が起きた可能性がある」と判断しました。

 仙台市消防局から16台,山形県東根市消防本部から6台,合計22台の消防車を出動させましたが,間もなく虚偽通報であることが発覚しました。

 仙台市消防局に対しては類似の虚偽通報が同年7月にもありましたが,警察では番号通知された電話番号から所有者を特定しました。結果として所有者の知人だった29歳の男が電話を無断で使用していたことが判明しましたので,この男を偽計業務妨害容疑で逮捕して,検察も同罪で起訴しました。

 12月21日に開かれた判決公判で、仙台地裁の鈴木信行裁判官は「被告は勤務先の労働条件の悪さに苛立ちを覚え、そのうさを晴らす目的で虚偽通報を繰り返した」と指摘しました。

 その上で「単なる人騒がせでは済まされない。虚偽通報を受けた消防車や救急車が出動し、その間に実際の緊急事態が起きれば被災者や急患の人命が失われる可能性もある」として,被告に懲役2年の実刑判決を言い渡しました。

刑法第233条(信用毀損及び業務妨害)

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

虚偽通報や,いたずらの119番通報は犯罪です


 119番通報があって出動したが,状況が確認できず通報者にも連絡がとれない・・・

 いたずら電話で消防車や救急車が出動している時に,本当の災害が発生したら・・・ 

 それが,あなたの家や家族,友人の家だったら・・・
 
 消防車や救急車の到着が遅れて,被害を大きくしてしまう可能性があります。

 虚偽通報や,いたずらの119番通報は犯罪です。

 絶対にやめてください!