消防士のための電気の基礎
電気の基礎
1 直流(DC)
時間に対して流れる方向が変化しない電流
2 交流(AC)
1秒間に50または60回の周期で流れる方向が変化する電流
3 静電気
ポリエステルなど,化繊が摩擦すると静電気が起きる。
衣服を脱ぐときに,パチパチと火花が出るが,これを剥離電帯という。この電気の電圧は3~5万Vと非常に高いが,エネルギーは小さいので人体に危険は無いが,ショックは大きい。
タンクローリーがパイプの中に油を流すときも液体と固体が摩擦するときに静電気が起きる。これを流動電帯という。
4 周波数
交流は地域により周波数が異なり,富士川を境に東部では50ヘルツ,西部では60ヘルツとなっている。
これは,日本で電気が使われるようになった明治時代に電気をつくるための発電機を外国から輸入したときからで,東京には「ドイツ製」の発電機が,大阪には「アメリカ製」の発電機がそれぞれ輸入されて電気をつくりはじめたことが由来となっている。東京のドイツ製発電機は周波数が「50Hz(ヘルツ)」の電気を,大阪のアメリカ製発電機は,周波数が「60Hz(ヘルツ)」の電気をつくる発電機だったため,大阪と東京を中心に「50Hz(ヘルツ)」と「60Hz(ヘルツ)」という2つの周波数の電気がつくられるようになり,今日に至っている。
5 オームの法則
電気は,電気抵抗が等しければ,電圧が大きいほど電流が大きくなる。電気抵抗が大きいほど電流が制限される。
電圧(E)
電流(I)=――――――
抵抗(R)
水に濡れると電気は通りやすく,感電災害を誘発する。真水そのものは高抵抗であるが,不純物が混入して水が導電体となる。
6 電力
電気は,光や熱を発生させたり,あるいはモーターを動かす。単位時間あたりに消費される電気量を電力といい,ワット(W)で表す。
電力(W)=電圧(E)×電流(I)
7 電圧の区分
特別高圧
直流と交流で7000Vを超えるものをいう
低圧
低い電圧。直流で750V以下,交流で600V以下の電圧。
※特別高圧と低圧の間を高圧という。
電気に関する災害
1 雷による災害
雷電流の大きなものは20万Aもあるが,5万A前後が多く,時間的には極めて短時間の数十マイクロ秒である。
落雷は地上の高さよりも,周囲に対してどのくらい出ているかが問題であり,草原の中で傘をさすのは危険である。大木の雨宿りはかえって危険であり,地面に伏せて時計その他の金属類は身体から遠くに離しておくことである。
2 感電について
電圧が低くても,人体に多くの電流が通電すると,感電の度合いは強くなる。
1mA 感じる程度
5mA 相当な痛みを感じる
10mA 我慢できない
20mA 筋肉の収縮が著しく,自ら動くことができない。引き続き流れると死に至る。
50mA 短時間でも相当生命が危険である。引き続き流れると死に至る。
100mA 致命的
3 電気の特徴
電気は日常生活に密着して便利に使われており,正しく使用する限り安全なものである。
電気は色も匂いも音もない。危険か安全か全く前兆がない。
4 現場での対応
電線の断線を発見したら,警戒し人を近寄らせない方策を講じ,電力会社等の施設者へ通報して係員の到着を待つことが良策である。断線した電線には絶対に触らないこと。
感電している被災者を発見した場合は,すぐに電気回路との接触から外すことが必要である。感電している被災者には絶対に直接触れないこと。乾いた木材などを使用したり,水溜りなどでは絶対に濡れない工夫をしてから救助することが重要である。
発電所や変電所設備への放水は絶対にしない。無人変電所が多いため施設関係者に連絡をすぐにすること。
火災の建物への引込線は,ヒューズが切れないまま断線していることがあるので,絶対に触らない。
電線や漏電した部分に水をかけたとき,放水線を伝って感電する場合や,崩れかけた作業場のトタン屋根に放水し,感電した事例がある。
柱上トランスへ放水するときは,十分な安全距離を保つと共に絶縁油等が燃焼しながら落下することがあるので,電柱真下の場所は避ける。
高圧線等への放水活動は,噴霧注水を原則とする。棒状注水は電源遮断後でなければ行わないようにする。万一,棒状注水を行う場合は燃焼物の真上に放水し,その落下水で消火するか,筒先を保持しない放水台座等で固定し放水する。